公共R不動産 コアメンバー紹介|小柴 智絵

ただいま公共R不動産でプロジェクトメンバーを募集しています。公共R不動産の業務をプロジェクト単位で契約し、コアメンバーとともに業務を遂行するメンバーです。そこで改めて公共R不動産のコアメンバーをご紹介。これまでどんなプロジェクトを担当してきたのか、体験談や活動に込める想いをお伝えします。

経歴を教えてください

小柴 智絵(こしば・ちえ)

・神奈川大学工学部建築学科卒
・東京都都市づくり公社入社
・東洋大学経済学公民連携卒
・一宮町役場 タウンマネージャー
・その後フリーランス(株式会社アフタヌーンソサエティ/公共R不動産(株式会社オープン・エー)/株式会社東京R不動産/株式会社一宮リアライズ)

公共R不動産のプロジェクトで特に印象深いものは?

静岡市蒲原地区「トライアルパーク」プロジェクトが印象に残っています。プロジェクトを進めるうえでのポイントや大切な要素を抽出してご紹介します。

1.2haもある広大な敷地がプロジェクトの舞台です。

・トライアルサウンディング初の試み

公共R不動産メンバーの妄想から生まれた手法「トライアル・サウンディング」を実践した公共R初のプロジェクトです。これまで公共空間は自治体が大きな整備投資をして活用事業者を募集しても、赤字経営になったり使い手が見つからないといった課題がありました。

こうした背景をうけて、今回は1.2haもある広大な敷地に小さな投資でテストマーケティングをしながら暫定利用し、この場所に必要な機能が洗練されていくというプロジェクトになりました。数年後、行政が再投資をして常設化するか、このまま活用するか改めて判断を行います。こうしたプロセスは今後も増えていくだろうと思います。

・地元プレーヤーの発掘

1.2haもある広大な敷地を舞台に、地元の小商から市外の大企業までたくさんのプレイヤーがトライできる場所をイメージしました。私たちはその使い手となるプレイヤー探しから始めることは少なくありません。プロジェクトの初期段階で地元プレイヤーのネットワークを持つキーマンを紹介してもらい、ヒアリングを行って事業性があるか検討しました。

また、「1DAY RePUBLIC アイディアキャンプ」というワークショップを開催し、地元プレーヤーや企業の人材を発掘し、オープン前から多くの人を巻き込むための場づくりを行なっています。

このように使い手の顔が見えてから、プロジェクトを組み立てるようにしています。

ワークショップ「1DAY RePUBLIC アイディアキャンプ」の様子

・周辺コンテンツの活用

敷地周辺コンテンツを生かしたソフトのプログラム作りも設計業務と並行して進めました。そのうちの1つが、サイクリングコースの設計。サイクリングの専門家をプロジェクトチームに加え、素人からプロまで楽しめるバリエーション豊かな10のサイクリングコースをつくりました。

その他にも、周辺の古い町並みを保存するために、トライアルパークのプログラムにどう結びつけるのか、古民家を活用しているプレイヤーへのヒアリングを行いました。トライアルパークの周辺コンテンツにたくさんの可能性を感じ、それを活用することを募集要項の重要な位置付けとしました。

今回はヒアリングまででしたが、公共R不動産では空き家の調査、空き家の特性にあった事業者とのマッチング支援を行うこともあります。

完成イメージ

・募集要項条件整理

事業者が実際に運営した場合の、集客人数、客単価、経費などを想定し、年間どのくらいの売り上げになるのか、市に使用料をいくら払うことができるか検証することが重要です。行政はここの検証を行わずに、募集要綱の条件を定めることが多いです。

企業にとって無理のない事業モデルとなっているか。行政にとっては、健全な事業として議会や市民の了承を得られるかどうかを判断します。私自身が施設運営に携わっている経験を生かし、事業者のオペレーションを想定して、施設整備費のどこを重点的にかけるのか検証し、抑えられるところは最低限のスペックにしてコストカットを行います。

自治体の扱う契約書や募集要項は、民間側が過度なリスクとなるような条件が設定されている場合があります。事業者が決定後、トラブルにならないように、また事業者に過度な負担となって撤退することのないよう、公平性を重視して作成します。

あなたが考える公共R不動産らしさ、特徴とは?

案件ごとにプロジェクトチームを組成して、その道のプロフェッショナルたちと仕事が出来ること。毎回新しい業界で未知のことにチャレンジするのは不安もあるけど、その分、常に学びを得られます。

グループ会社である株式会社スピークのプロジェクトですが、これまでアウトドアとは無縁の人生にもかかわらず、市の雑木林を活用したグランピング場の企画のプロマネを担いました。今年で3年目に入りましたが、客層はアウトドア初心者のカップルや女性客が多く、結果的にアウトドア素人の目線でつくったのが良かったのかもしれません。

グランピングブームもあり、このプロジェクトをきっかけにその後も相談案件は増え続けています。アウトドアコンテンツ企業のネットワークも広がりました。

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公共R不動産をやる中で、どんなことにやりがいを感じますか?

自治体のふわっとした相談からはじまり、エリアビジョンの作成、企業のマッチング、設計、工事監理、オペレーションまで携わることができます。その中でも自分は建築出身なので、風景ができるところに一番の達成感を感じます。

自治体担当者は不動産や運営の知識がない場合が多いです。特に募集要項を作成する上では、民間の不動産の知識やオペレーションのノウハウは必要なため、地元で運営しているグランピングやシェアオフィスの経験が役に立っています。また逆に、自治体に所属していた経験を生かして、企業に対して行政との付き合い方をアドバイスしたり、交渉の場に立ち会うこともあります。

ビジョン作成の段階から地域に入りこみ、自分の足でエリアの強み弱みを見極めながらどんなコンテンツがハマるのか想定し、地元プレイヤーを探すことから携われるところが、面白さでもあります。

公共R不動産でこれからチャレンジしていきたいことは?

まずは組織の一人として。公共R不動産の設立当初からのスローガン「公共空間をもっと楽しくオープンに!」に共感した仲間たちと、公共空間の活用がもっと当たり前の世の中になるようにチャレンジしていきたいです。

公共施設はまだまだ大手企業が独占しているマーケット。自治体は経営が安定した大手企業と組みたがるため、地元の中小企業や地元プレイヤーが参入しずらい状況です。静岡でのトライアルサウンディングのように、自治体と連携して、そこの仕組みづくりから関わることを今後もやっていきたいです。

また自治体とこれまで付き合いのなかった企業や個人プレイヤーに対して、公共空間の面白さを広く普及させたり、通訳的な立場で事業をコーディネートしていきたいです。現在、「公共不動産データベース」の民間企業の対応を担当していますが、こうした活動を大切にしていきたいと思います。

最後に個人として。これまでプロジェクトで関わってきた都市が少しずつ増えてきました。プロジェクトによっては2~3年関わるので、自分の地元以上に思い入れが強くなり、毎回移住したくなってしまうほどです。全国に会いたい人がいる人生は豊かだなと思います。プロジェクトが終わったらそれっきりではなくて、まちとの関係は今後も持ち続けていきたいです。

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プロジェクトメンバー募集にあたって、説明会を開催します。詳細は以下よりご覧ください!

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